株の誤発注は取り消せない。
証券会社は損失を補填しません
株の練習でいちばん学ぶ価値があるのは、チャートの読み方でも銘柄選びでもありません。「数字を打ち間違えないこと」です。相場で負けるのは避けられませんが、桁の打ち間違いは100%避けられます。そして避けなかった場合、誰も助けてくれません。
約定したら、取り消しも補填もありません
まずここを誤解している人が多いので、最初に書きます。
注文が成立(約定)する前なら、取り消せます。成立してしまったあとは、取り消せません。「間違えました」と電話しても、元には戻りません。
楽天証券は公式サイトで、利用者の入力ミス等によって過大な数量や意図しない価格の注文になった場合でも、注文の取消や損失の補填は行わないと明記しています。しかも、確認画面を経て受注された注文であれば同様の扱いになる、とも書かれています。これは楽天証券が特別に厳しいのではなく、ネット証券に共通する考え方です。
さらに厄介なことに、約定前でも取り消せない時間帯があります。証券会社のシステム処理の都合で、市場の前後や引け後の一定時間は新規注文・訂正・取消のすべてが受け付けられません。「気づいたけど、その時間は操作できなかった」も起こり得ます。
5株のつもりが500株。4,235万円の誤発注
抽象的な話ではありません。楽天証券自身のメディアに、個人投資家の実話が載っています。
信用取引で、ある銘柄を5株買うつもりが500株発注してしまった事例です。約定したのは約4,235万円分。気づいたのは翌日の休憩時間で、その時点の評価損益はマイナス270万円でした。
この方はその日のうちに250株を売却しましたが、残りは翌日以降に売ることが難しくなり、企業のIRに電話して業績を確認したうえで、権利確定月に向けて少しずつ売却。最終的に損失を約200万円まで圧縮しています。対応としては上手いほうです。それでも200万円です。
他にも、著名な優待投資家が1株のつもりで100株を空売りしてストップ高で踏み上げられ、逆日歩まで払って数百万円の損失を出した例が報じられています。これは初心者だけの問題ではありません。
出典:楽天証券のオウンドメディア掲載の投資家インタビュー記事。金額・経緯は同記事に記載されたものです。
なぜ桁を間違えるのか
「不注意だった」で片づけると再発します。構造的な原因があります。
- 単位が画面上で紛らわしい。数量欄が「株」なのか「単元」なのか、アプリによって表記が違います。100株=1単元なので、ここを取り違えると100倍ずれます。
- スマホのテンキーは0を1つ多く打ちやすい。画面が小さく、押した感触もありません。「200株のつもりが2,000株」は代表的なパターンです。
- 前回の入力が残っている。数量欄や注文タブ(現物/信用)に前回の選択が残り、そのまま送信してしまいます。
- 深夜の予約注文は、気づくのが半日後。約定するのは翌朝なので、ミスに気づく頃には手遅れになりがちです。
- 隣接する数字キーを打ち間違える。「383円」が「333円」に、「5」が「6」に。1文字違うだけで注文の意味が変わります。
確認画面で桁ミスを見抜く、たった1つの読み方
対策は1つだけ覚えれば十分です。
理由は単純で、桁のミスは必ず総額に出るからです。
「500株」と「5株」は、画面上ではたった1文字の違いです。見落とします。しかし総額は「4,235万円」と「42万円」になります。これを見落とす人はいません。株数を睨んでも間違いは見つかりませんが、金額を見れば一発です。
あわせて、確認画面では以下も一緒に見る癖をつけてください。どれも一度間違えると戻せない項目です。
| 見る場所 | 何を確認するか |
|---|---|
| 概算約定代金 | 最優先。想定した金額と桁が合っているか |
| 売買の別 | 「買」と「売」が逆になっていないか |
| 現物 / 信用 | 信用のタブが残っていないか |
| 預り区分 | NISAで買うつもりが特定口座になっていないか(解説) |
| 成行 / 指値 | 指値のつもりが成行になっていないか |
| 有効期限 | 当日中でよいか、翌日以降も残すか |
6項目ありますが、慣れれば3秒です。そしてこの3秒が、200万円と42万円の差になります。
信用取引だと被害が桁違いになる
冒頭の4,235万円の事例が信用取引だったのは偶然ではありません。
現物取引なら、資金以上の注文は余力不足で弾かれます。10万円しか入れていなければ、桁を間違えても100万円分は買えません。口座残高が最後の安全装置として働きます。
ところが信用取引は預けた資金の数倍まで注文できるため、桁を1つ間違えた注文がそのまま通ってしまいます。安全装置が外れた状態です。
それでもやってしまったら
順番に確認してください。
- まだ約定していないか、注文照会で確認する
未約定なら取り消せます。ここで気づけば損失はゼロです。真っ先に見てください。 - 約定していたら、慌てて成行で投げない
パニック売りで傷を広げるのが最悪のパターンです。冒頭の事例が損失を200万円に圧縮できたのは、一度に投げず分けて売ったからです。 - 買う量を間違えた場合、全額をすぐ売る必要はない
流動性の低い銘柄を一度に売ると、自分の売りで株価を下げて損失を広げます。 - 信用取引で買いすぎた場合は「現引」という選択肢がある
自己資金で返済して現物株として受け取る方法です。資金があるなら、強制的な決済を避けられる場合があります。 - 証券会社に補填を期待しない
前述のとおり、入力ミスは補填の対象外です。時間を使うなら、どう処分するかの判断に使ってください。
練習で防げるミス、防げないミス
正直に切り分けておきます。
練習で防げるのは、この記事で扱った操作のミスです。桁の打ち間違い、売買の取り違え、区分の選び間違い。これらは画面の流れを体に入れてしまえば激減します。
練習で防げないのは、相場そのものです。買った株が下がることは、どれだけ練習しても防げません。それは投資という行為に元から含まれているリスクで、当サイトが減らせるものではありません。
だからこそ、防げるほうは確実に潰しておく価値があります。相場で負けるのは仕方ありませんが、打ち間違いで負けるのは悔しすぎます。
実際の証券アプリの画面構成を再現した練習モードです。注文の入力から確認画面、暗証番号、約定まで本番と同じ順番で進みます。「総額を読む」癖は、ここで何度でも練習できます。
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